電債(でんさい)とファクタリングの違いは?メリット・デメリットも解説

電債は、手形や売掛債権の問題点を克服した新たな金銭債権です。電債は金融機関や手形
割引業者に譲渡することで、支払期日前に現金化できるため、ファクタリングに似ている
と言われることがあります。この記事では、電債とファクタリングの違いやメリット・デ
メリットについて解説しています。

手形・電債(でんさい)とは

手形とは、定められた期日までに、記載された金額の支払いを約束する紙ベースの証書の
ことです。手形を受け取った人は、手形に記載されている期日以降に金融機関で手続きを
することで、記載された金額を受け取れます。

一方、電債とは「でんさいネット」が取り扱う金銭債権のことです。電債は、事業者の資
金調達の円滑化等を図る目的で、平成20年12月1日に施行された電子記録債権法のもと創
設されました。

電債は、単純に手形や売掛債権を電子化したものと思われがちですが、手形や売掛債権の
問題点を克服した新たな金銭債権という位置付けにあたります。

電債のメリット

電債は、代金を支払う側、受け取る側、双方にメリットがあります。

代金を支払う側のメリットとしては、事務負担とコストが削減できる点です。具体的には
、電権は支払手形のように、手形の振り出しや郵送などの業務が不要になります。また印
紙税や郵送コストも削減できます。ペーパーレスのため災害による喪失、紛失や盗難のリ
スクもありません。

受け取る側のメリットとしては、領収証の郵送や金融機関への取り立て依頼などの業務が
不要になります。切手代や領収書に貼り付けるための印紙代といったコストも削減できる
他、災害による郵送遅延などで、手形が受領できないリスクも回避できます。

電債のデメリット

電債を利用するには、取引先もでんさいネットに登録していなければなりません。取引先
が、でんさいネットに登録していない場合、登録を依頼する必要があります。

また多くの取引先があると、すべての取引先がでんさいネットに登録してくれるとは限り
ません。電債は「電子記録債権」という仕訳を起こす必要があり、通常の売掛金と処理が
異なります。そのため、売掛金や買掛金に関する仕訳をするときに電債を使った取引・手
形取引が混在し、担当者の業務が煩雑になる可能性があります。

ファクタリングとは

ファクタリングとは、ファクタリング業者が利用者の売掛債権を買い取ったり、利用者の
取引先の支払いを保証したりする金融サービスのことです。

ファクタリングは「買取型」と「保証型」の2つがあります。買取型とは、取引先の売掛
債権をファクタリング業者に売却して、現金化する資金調達方法です。保証型とは、ファ
クタリング業者に保証料を支払うことで、取引先からの代金の支払いを保証してもらうサ
ービスのことを指します。

なお本記事では、買取型ファクタリングについて紹介していきます。

ファクタリングのメリット

ファクタリングは売掛債権があれば、ファクタリング業者に売却することで、売掛金の入
金日よりも前倒しで現金を受け取れます。なかには即日買取に対応してくれるファクタリ
ング業者もあるため、スピーディな資金調達が可能です。

またファクタリングは売掛債権を売却する取引なので、自社の業績が悪い、あるいは事業
主や企業の信用情報に問題がある場合でも、取引先の信頼性が高ければ利用できます。フ
ァクタリングを利用して、信用情報に影響することもありません。

ファクタリングのデメリット

ファクタリングは資金調達方法の中でも、手数料が高い部類に入ります。

また買取型ファクタリングを利用して得られる資金は、売掛債権からファクタリング業者
の手数料を引いた金額です。そのため継続的に利用すると、売掛金が徐々に目減りしてし
まいます。

さらにファクタリングの利用が取引先に知られると、高い手数料を払ってでも利用しなけ
ればならないほど資金繰りに困っている会社とみなされる場合があります。

二社間ファクタリングは利用者とファクタリング業者の2社で契約をするため、取引先に
ファクタリングの利用を知られるケースはまれです。ただし売掛金の入金後、ファクタリ
ング業者への返済が遅れると、取引先に通知され、ファクタリングの利用を知られる可能
性があります。

なお、取引先も含めた3社で契約する三社間ファクタリングは、取引先に秘密にしておく
ことができません。

ファクタリングと電債の違い

電債は支払い・決済手段の一種ですが、期日前に債権を現金化する電債割引も利用できる
ため、ファクタリングに似ていると言われることがあります。電債とファクタリングは機
能が似ている面もありますが、次のような違いがあります。

  • 運営するネットワーク
  • 審査基準
  • 契約
  • 未回収リスク
  • 手数料
  • 取引先への周知

運営するネットワーク

ファクタリングは、利用者が任意で選んだファクタリング業者を通じてやり取りをします
。一方、電債は全国銀行協会が100%出資している、でんさいネットを介してやり取りをし
ます。

審査基準

ファクタリングの審査では利用者の業績や信用情報よりも、売掛先の信頼性を重視します

しかし電債割引を利用する場合、銀行融資と同等の審査基準が適用されます。そのため、
自身の信用情報が悪化していたり、自社の経営状況が思わしくなかったりすると利用は難
しいでしょう

契約

ファクタリングは売掛債権を譲渡するたびに、ファクタリング業者と契約をしなければな
りません。さらに多くのファクタリング業者があり、それぞれ手数料や利用条件などが異
なるため、比較も必要になるでしょう。ただしファクタリングは、継続的に同じファクタ
リング業者を利用して、毎回売掛金を期日までに返済していれば、手続きが簡素化されて
いく場合があります。

電債は、初回契約時にでんさいネットに登録すれば、新たに口座開設をする必要がありま
せん。電債割引も簡素な手続きで利用可能です。

未回収リスク

ファクタリングはノンリコース(償還請求権なし)が基本です。ファクタリングにおける
ノンリコースとは、倒産などで売掛金が回収できない場合のリスクをファクタリング業者
が負う契約のことを言います。つまりファクタリングは、基本的に利用者が売掛金の未回
収リスクを負うことがありません。

一方、電債割引を利用して売掛先が支払不能となった場合、利用者が金融機関に対して責
任を負うことになります。

手数料

ファクタリングの手数料の相場は、二社間で8~18%、三社間で2~9%、電債割引の手数
料は1.5~5.5%です。そのため一般的に電債のほうが、低コストで資金調達が可能です。

ただしファクタリングは売掛債権の信頼度が高いほど、あるいは金額が大きいほど手数料
が下がる場合があります。

取引先への周知

ファクタリングは二社間ファクタリングであれば、基本的に利用しても取引先に知られる
ことはありません。ただし債権譲渡登記を求められる二社間ファクタリングの場合、取引
先に知られる可能性があります。

一方、電債割引は利用すると、電子記録に履歴が残ります。したがって、でんさいネット
を利用している取引先に対しては、電債割引の利用を秘密にしておくことはできません。

電債とファクタリングどちらが良い?

電債とファクタリングは多くの違いがあるため、自社の状況によって使い分ける必要があ
ります。以下、電債に向いているケース、ファクタリングに向いているケースに分けて紹
介します。

電債に向いているケース

電債割引の審査では、自社の信用情報や業績も影響する可能性があります。しかしファク
タリングに比べて手数料が低い傾向があるため、自社の信用情報や経営状況が良好な場合
は電債を検討してみましょう。

また手形での支払いや、受け取りにかかる労力や事務コストを抑えたい事業者にもおすす
めです。

ただし、でんさいネットを利用している取引先が少ない場合、取引先に登録を打診する必
要があります。

ファクタリングに向いているケース

ファクタリングは手数料が高い反面、審査で売掛先の信頼性が重視されるため、自社の業
績や信用情報が思わしくない事業者におすすめです。

また資金繰りに苦しいというイメージを取引先に持たれる可能性があるので、売掛債権を
譲渡した事実を知られたくないときは、債権譲渡登記が不要の二社間ファクタリングを利
用すると良いでしょう。

まとめ

電債は支払い・決済手段の一種ですが、売掛債権を譲渡し資金化できるため、ファクタリ
ングと似ています。しかし審査基準やコストなどの違いがあるため、自社の信用情報や業
績が良好なときは電債、思わしくないときは、コストは高くなりますがファクタリングが
おすすめです。

電債とファクタリング、両者の違いを理解して、自社にあった方法を選びましょう。

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この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー:金子 賢司
1975年4月5日生まれ
1998年立教大学法学部法学科卒業
株式会社菱食(現三菱食品株式会社)に勤務
生命保険会社、損害保険会社を経てファイナンシャルプランナーとして活動中。

保有資格:FPの最上級資格CFP資格保有者
(CFPライセンス番号:90260739)

所属団体:日本FP協会
WEBサイト;https://fp-kane.com/