譲渡制限特約付き債権はファクタリング会社に買い取ってもらうことは可能か?

譲渡制限特約付き債権のファクタリング利用には、特有の注意点があります。

通常の売掛金はファクタリングで資金化できますが、譲渡制限特約が付いている場合、契約上の制約や債務者(取引先)の承諾が必要となるケースがあります。特に民法改正後、特約付き債権の取り扱いが変わったため、適切な方法で進めることが重要です。本記事では、譲渡制限特約付き債権の概要や法改正による影響、ファクタリングを利用する際のポイントについて解説します。

譲渡制限特約付き債権とは何か

通常の売掛金(債権)であれば、ファクタリング会社に売却することで早期資金化が可能です。しかし、「譲渡制限特約付き債権」の場合は、その名前の通り契約書等で債権の譲渡が制限されているため、自由な譲渡が難しくなります。

具体的には、取引基本契約や個別契約で「当社に対する債権を第三者に譲渡してはならない」「譲渡する場合は当社の事前承諾を得ること」などの条項が定められているケースです。こうした特約がある場合、ファクタリング会社に債権を売却しようとしても、債務者(取引先企業)が支払いを拒否できる可能性が高まるため、事実上ファクタリングを利用しにくいという問題があります。

では、なぜそもそも譲渡制限特約が設けられるのでしょうか。理由としては以下のようなものが挙げられます。

● 企業の信用管理

自社の売掛債権が通常の取引先ではない第三者に譲渡されると、情報漏洩のリスクが高まる可能性があります。

● 事務の煩雑さを防ぐ

お互いが商材を売買している場合、発生する売掛金は相殺することが可能です。しかし、売掛金が第三者に譲渡されると、相殺ができなくなります。また債権が譲渡されると、債務者は譲受人との連絡が必要になるなどの手間が増えることがあります。

● 債権回収の担保の役割を果たさなくなる

売掛金を相殺する取引は、債権回収の担保という機能もありますが、同様に債権が譲渡されると相殺できなくなります。

● 過誤払いのリスクがある

債権が譲渡されると債務者は、支払相手を間違えるリスクがあります。

こうした背景を踏まえ、譲渡制限特約付き債権でも本当にファクタリングできるのか、あるいはどうすれば少しでも譲渡できる可能性が高まるのかを見ていきましょう。

民法改正前後の違い:譲渡制限特約付き債権の扱い

2020年4月1日に施行された民法(債権法)改正により、譲渡制限特約付き債権の扱いが大きく変わりました。

改正前(旧民法)では、譲渡制限特約が付された債権は「契約上、譲渡できない」と解釈され、譲渡そのものが無効とされていました。

しかし、改正後は、譲渡制限特約が付されている場合でも、原則として債権譲渡は有効とされています。

ただし、譲受人が特約の存在を知っていた(悪意)、または重大な過失により知らなかった(重過失)場合、債務者は譲渡の効力を拒否し、従来どおり元の債権者に支払うことが可能となるなど、一定の制限は残されています。そのため譲渡制限特約付き債権をファクタリングする際には注意が必要です。

ファクタリングにおける買い取りの可否

企業が保有する売掛金を資金化する手段として注目されるファクタリングには、「三社間ファクタリング」と「二社間ファクタリング」の2種類があります。それぞれの特徴と、譲渡制限特約付き債権の取り扱いにおけるポイントを解説します。

三社間ファクタリングと二社間ファクタリング

ファクタリングには三社間ファクタリングと二社間ファクタリングの2種類があります。

三社間ファクタリング

債権者(売掛金を持っている企業・個人)と債務者(取引先)、ファクタリング会社が契約に関与するファクタリング契約です。

債務者が債権譲渡を承諾した上で、ファクタリング会社が債権を買い取り、債務者はファクタリング会社に直接支払います。譲渡制限特約があっても、多くの場合、債務者が同意すれば問題なく売却可能です。

二社間ファクタリング

債権者とファクタリング会社のみが契約を結ぶファクタリング契約です。債務者に通知せず、ファクタリング会社から資金を受け取れます。債務者が承諾する必要がないため、スピーディーに資金化できる反面、譲渡制限特約があるとファクタリング会社がリスクを負うことになるため、審査が厳しくなったり、買い取りを断られたりする可能性があります。

譲渡制限特約付き債権を買い取るファクタリング会社もある

民法改正後は、譲渡制限特約が付いていても「取引先(債務者)の承諾が得られれば問題ない」という考え方が一般的です。そのため、特に三社間ファクタリングを専門とする会社は、債務者への通知と承諾を条件に、譲渡制限特約付きの債権でも買い取ってくれる場合があります。

一方、二社間ファクタリングの場合は、債務者に譲渡を通知しないで進めるため、未回収リスクなどをファクタリング会社が負う可能性が高いと判断すると、買い取りを拒否されることもあります。したがって、譲渡制限特約付き債権をファクタリング利用する際には、「債務者の了承を得られるかどうか」と「ファクタリング会社が取引に応じてくれるか」が大きなポイントとなります。

譲渡制限特約付き債権を売却する際のメリット

ファクタリングを活用することで、資金繰りの改善や財務状況の向上といったさまざまなメリットが得られます。早期の資金調達が可能になるだけでなく、負債を増やさずに経営の安定化を図れる点も大きな利点です。また、取引先との関係維持にもつながる可能性があります。ここでは、ファクタリングの具体的なメリットについて詳しく解説します。

キャッシュフロー改善

最も大きなメリットは、早期に現金を手に入れられることです。債権が回収できるまでの待ち時間(一般的には30日~60日、時には90日以上)を大幅に短縮できるので、資金繰りの安定化につながります。特に急ぎの支出(仕入代金、従業員の給与、家賃など)がある場合や、追加投資を検討している場合など、現金化の早さは経営上非常に大きな利点です。

債務超過の回避や財務体質の向上

ファクタリングは借入(ローン)ではなく、あくまで売掛債権の売却です。そのため、負債として計上されず、財務諸表上は借入金が増えるわけでもありません。結果的に、債務超過を回避したり、自己資本比率を維持したりといった財務上の利点があります。金融機関からの追加融資を検討する際にも、負債が増えていないことで審査を有利に進められる可能性があります。

取引先との関係維持

「取引先からの承諾を得る」という手続きが必要になる場合、債務者にはファクタリングを使いたい理由を説明しなければなりません。しかし、ビジネスの上では、透明性やコミュニケーションを図ることで、むしろ取引先との関係強化につながるケースもあります。

適切に事情を伝えれば、ファクタリングで資金繰りが安定すれば、取引先への支払い遅延も防げるため、相手にとってもメリットを理解してもらえる可能性があります。

譲渡制限特約付き債権をファクタリングで買い取ってもらうときの注意点

ファクタリングを利用する際には、契約内容の確認や取引先との調整が欠かせません。特に、譲渡制限特約付き債権を扱う場合、債務者(取引先)の承諾や契約書の精査が重要になります。また、適切なファクタリング会社を選ぶことも、スムーズな資金調達のためには必要不可欠です。以下、ファクタリングを活用する際に押さえておくべきポイントについて見ていきましょう。

債務者(取引先)への確認・承諾

三社間ファクタリングでは、債務者の承諾が必須となります。契約書に譲渡制限特約がある場合は、まず債務者がその譲渡を認めてくれるかどうか、事前に打診をしなければなりません。取引先との交渉が難航する場合もあるため、丁寧な説明や相手方のメリットの提示など、慎重に進めることが大切です。

二社間ファクタリングを検討する際も、譲渡制限特約付きの債権を買い取ってくれるファクタリング会社は限られます。最初から「譲渡制限特約付きでも応相談」と明示しているファクタリング会社に問い合わせるのがスムーズです。

契約書の条文や特約の内容を事前に精査する

譲渡制限特約がどのような内容で定められているか、改正民法でいうところの「正当な利益」を債務者が主張できる内容なのかなど、実際の条文をしっかり確認することが重要です。特約が非常に厳格に定められている、あるいは債務者に明確な「正当理由」があるような場合、ファクタリング会社の審査で否決になる可能性もあります。

信用できるファクタリング会社を選ぶ

譲渡制限特約付き債権を取り扱うには、法的リスクや実務上の煩雑さがつきまといます。そのため、実績の少ないファクタリング会社や、過度に高額な手数料を提示してくる業者も存在する可能性があるため注意が必要です。

ファクタリング手数料の相場や契約条件を複数社で比較し、かつ契約書の内容やサポート体制も含めて総合的に判断するのが望ましいでしょう。

信頼できる会社は、譲渡制限特約付き債権でも柔軟に対応策を提案してくれたり、債務者への説明サポートを行ってくれたりします。

譲渡制限特約付き債権の売却手順

実際に、譲渡制限特約付き債権をファクタリングで現金化する際には、以下のステップを踏むことをおすすめします。

1.契約書・特約のチェック

まずは取引先との契約書を再確認し、いつ締結した契約か、どのような文言で非譲渡特約が定められているか、解除や変更の可能性があるかをしっかりと確認します。

2.債務者との交渉・合意形成

三社間ファクタリングを利用する場合は、債務者に対して「債権をファクタリング会社に譲渡したい」旨を相談し、事前に承諾を得る必要があります。

一方、二社間ファクタリングでは債務者の承諾は不要ですが、譲渡制限特約があることを隠して進めると、後々トラブルに発展するリスクが高まります。そのため、事前にファクタリング会社へ正確に伝えておくことが重要です。

3.ファクタリング会社との契約・実行

ファクタリング会社へ見積もりや審査を依頼する際は、手数料率や償還請求権(買い戻し義務など)の有無など、契約書に記載される重要事項を必ず確認しましょう。

また、信用調査の一環として、譲渡制限特約の有無や債務者の財務状況について、ファクタリング会社から詳細な質問を受ける可能性があります。

条件に問題がなければ契約を締結し、資金を受け取ります。

その後、三社間ファクタリングの場合は、期日に債務者が直接ファクタリング会社へ支払いを行います。一方、二社間ファクタリングの場合は、債務者から入金を受けた後に、債権者がファクタリング会社へ支払いを行います。

まとめ

譲渡制限特約付き債権とは、契約書などで債権の譲渡が制限されている売掛金のことです。従来は譲渡が無効とされていましたが、2020年の民法改正により、一定の条件下で譲渡が有効と認められるようになりました。ファクタリングには三社間と二社間の2種類があり、特約付き債権の取り扱いには債務者の承諾やファクタリング会社の審査が関わります。スムーズな資金化には契約内容の確認や信用できるファクタリング会社の選定が重要です。

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この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー:金子 賢司
1975年4月5日生まれ
1998年立教大学法学部法学科卒業
株式会社菱食(現三菱食品株式会社)に勤務
生命保険会社、損害保険会社を経てファイナンシャルプランナーとして活動中。

保有資格:FPの最上級資格CFP資格保有者
(CFPライセンス番号:90260739)

所属団体:日本FP協会
WEBサイト;https://fp-kane.com/